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音楽的に自立する

初めて教えた生徒さんの話をします。

まだ独身だった頃の話です。 ピアノ講師紹介サイトに登録して、しばらくしてから1通の問い合わせメールが来ました。

「ショパンの幻想即興曲が弾きたいです。これしかやるつもり無いです。弾けるようになりますか? 弾けるようにならないんだったらやりません。」後にも先にも、こういう方は珍しいです。

ピアノは未経験、楽器はギターのみという若い男性。幻想即興曲は中級程度の方が弾く曲です。経験では幼稚園から習い始めた子が小学校高学年でやっと弾くくらいのレベル。無理じゃないかしら、というのが率直な感想でした。

お断りしようと思ったのですが、初めての生徒さんです。一応知り合いのピアノの先生に相談してみたら、意外にも「弾けるんじゃなぁ~い」というお返事。「大学生でしょ、楽譜読めるんだし、運動神経良さそうだもの」

はあ、そんなものですか。ということで「弾けますよ(^^)」とメールに返信して(汗)

レッスンが始まりました。

結果どうなったかと言いますと、本当に弾けました。

どうやったかと言いますと、10か月ほど、本当にこれ1曲だけレッスンを続けました。 私が楽譜を読んで、小さい子を教えるみたいに手の動かし方を一つ一つ覚えていくやり方です。ベテラン先生の仰った通り、運動神経の良い方で覚えが早かったです。ギターが弾けるので指はよく動く方だったのも幸いしました。たどたどしい弾き方でしたが、ちゃんと最後まで弾けるようになって、満足して辞めていかれました。

さあ~て、質問です(ブルゾンちえみ風) この人は、本当にピアノが弾けるようになったのでしょうか?

私の答えはNo。 何故なら、他の曲は弾けないからです。

自分で楽譜を読んで、自分の力で演奏を組み立てられるようになる事を「音楽的自立」といいます。最終的には先生の操り人形を卒業し、自力で音楽を楽しめるようになることがレッスンの最終ゴールです。

ざっくりとでも音楽の構成を理解し、作曲者の意図を読み取り、曲の背景や演奏法を勉強し、先生の助けを借りてでも、自分なりのイメージを持って曲に向き合う。レベルは人それぞれですが、これが出来て初めて「ピアノが弾ける」と言える、と多くの先生は考えています。ただ指を動かすだけでは不十分なのです。

何も分からなくても、もちろん音楽は楽しいです。 ですが意思を持って弾くと、それはあなたの言葉になります。

何かを伝えるために、作曲家は曲を書きます。 それを受け止めて応えた時、表現活動への扉が開かれます。

ぜひ、音楽的自立を目指して欲しいと思います。

私も大きな事は言えず、まだまだ勉強中ですが、入口のご案内くらいは出来ますので ご一緒に楽しんで頂けたらなと思っています。

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