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百聞一見


ヤフーニュースを見ていたら「感覚質」という言葉が目に飛び込んできました。


「赤」という言葉を知るのと、実際に「赤い色」を目にして、そこで色彩を感じることとは全く違います。  

 後者のような経験を「感覚質」(Qualia=クオリア)と呼び、変に日本語でも普及し、家電製品の名前になっていた時期もある。”



この言葉で思い出した経験があります。


ニュージーランドで1週間のキャンプツアーに参加した時の話です。無人島の森で、テント無しでソロキャンプをした日がありました。せっかくだからとガイドさんが企画してくれたイベントだったのですが、最初は何が「せっかく」なのか理解できませんでした。天気が悪かったからです。


案の定、雨が降ってきました。ずぶ濡れでタープと呼ばれる布を枝に張り、急場しのぎの仮設宿を作って、たった1人で野宿です。食料はパンと果物だけ。こんな遠くの国まで来て、私は何をしているんだろう。今から思えば、危険生物のいないNZの森だからできた貴重な経験だったのですが、その瞬間は価値が分かりませんでした。これの何が素晴らしいのか。


夜が明けて、朝日が差してきました。

そして、ガイド氏が私たちにこれをすすめた理由が分かった気がしました。


木々の隙間から放射線状に光が差し、鳥がさえずる。ここまでは想像どおりの朝の光景です。でも、その先が少し違いました。


足元で一斉に虫が動き出し、地面から不思議な温かさが湧き上がるのを感じたのです。はっと気付いて周囲を見回すと、土だけではなく、あらゆる物が動いていました。生物も、枝も葉も、光も、土も、全てが一斉に起きて活動を始めています。夜の静寂が、光を合図に一気に生き物の世界に切り替わったようでした。


これが、本物の「朝」だと思いました。


いえ、勘違いかもしれません。でも、今まで知っていた「朝」が、何だか薄っぺらく思えて。NHKを見ながらコーヒーを飲むのが朝ではない。命が一斉に活動を始める、このエネルギーが「朝」なのだと体感した気分だったのです。誰かに言いたかったのですが、ソロキャンプだったので誰もいませんでした。


というわけで、朝という言葉の意味を知るのに29年もかかった話です。少し時間がかかりましたが、一つ覚えられてよかったと思います。


音楽と全く関係ない話になってしまいました。


凡人の学びというものは、絶望的に時間がかかるものなのかもしれません。

けれど、止まらずに進めば素晴らしい景色に出会うこともあります。

スローに学べばいいんですよ。ああ、やっと教室の名前につながりました。


何だか調子がおかしいので、今日はこれくらいで。

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