雨の日
また子育ての話です。
青空保育の思い出は尽きないですが、一番印象に残ったのが雨の日の活動でした。
小さい子を雨の中歩かせる事には賛否あります。安全に十分配慮しているとはいえ、天候は急変する事もあります。寒くて泣いているのを見て疑問に思ったり。良いと信じて始めたものの「この保育、大丈夫なのかしら」と気持ちは定まらないまま、その日も雨の中、畑で稲刈りをしていました。
娘と私は徒歩で山を越えて通っていたので、解散してからまた雨の中を歩いて丘を越えなければいけません。泣くかな?なんて心配しながら帰途に着きます。
雨は次第に激しくなり、雷も鳴り出しました。少しの間、木の下で雨宿り。土砂降りが続きましたが、しばらくすると雨足も弱まり、陽が差した次の瞬間です。絶景が現れました。
木々の隙間から沢山の木漏れ日。まるで宗教画のように光線がパアッと広がり、光が全ての水滴に反射しています。草も木も、空間も、一斉にキラキラと輝いて別世界のよう。
初めて見る森の姿に興奮して思わず「ねえ!」と大声を出し「きれいね、」と言いかけてハッと思いとどまる。子供が何かを感じる前に声かけをしてはいけないのだった。それで、はやる気持ちを必死で抑えながら、娘の言葉を待ちました。この景色がどんな風に見えるんだろう? どんなユニークな表現をしてくれるかな。
しばらくして娘が「おかあさん」と呼びました。(!)期待を込めて顔を見ます。すると、言いました。
「おかあさん、きょうは よく がんばったねえ」
娘が見ていたのは私でした。
親はつい欲が出て、あれも見せたい、これもさせたいと張り切りますが、なんてことはない、子供の方はお母さんしか見ていなかったりするものなのですね。真っすぐな優しさを感じます。
自分も寒いのに母を気遣ってくれたのね、ありがとう。私は幼稚園の頃、親をねぎらったことなんて無かったんじゃないかしら。
「あれこれ心配しなくていい、この子はまともに育っている。このままこの活動を続けてみよう」迷いが自然に消えていくのを感じました。
小さな娘と手をつないで見た美しい光景、今でも思い出します。何とも言えない幸福感でした。誰も見ていないと思っていた小さな頑張りを、娘が褒めてくれたのが少し嬉しかったのを覚えています。
それで、その日は雨に感謝をしたのでした。